天文 −流星群を見てみよう−


狙ったところに写ってくれないのが、流星です。
どこに写るかは運次第ですね。
アストロアーツのギャラリーにも流星の写真が
ありますから、参照してください。

【流星】
宇宙に浮かんでいる小物体が、地球の引力に引き寄せられ、高速度(20〜100Km/S)で大気圏に飛び込んできたとき、大気との摩擦熱によって発光する現象をいいます。地上からは、ちょうど夜空に線が引かれるように見えます。この現象のもとになる物体(流星体)は、せいぜい米粒程度の大きさで数十分の1gのものです。通常高度100〜300Kmで発光して燃えつき、高度30Kmまで落下するのはまれです。この現象は昼夜の別なく起き、平均的には、一日あたり数十億個、全量200tが地球に飛び込んでくるといわれています。
実際に肉眼で見ることができる流星が発生するためには、ある程度大きな流星体が必要となるのですが、それほど多くは存在しません。したがって1ヵ所で一晩に観測できる流星の数はせいぜい数個程度でしょうか。

【流星群】
毎年同じ時期に多数の流星が発生する現象をいいます。普段よりも大量の流星体が地球に飛び込んでくることによって生じます。このときに観測できる流星数は、最も多くなる極大の時(たいてい1〜2時間)には1時間あたり10〜60個になります(非常にまれですが、ピーク時には1分あたり20個以上観測できることもあります)。
この現象を引き起こす大量の流星体は、周期的に巡ってくる彗星によってもたらされます。彗星は、太陽に近づくたびに太陽に輻射熱で溶かされます。その溶かされた大量の物質は、彗星の軌道上に置き去りにされます。この軌道を地球が通過するとき、彗星が置き去りにした物質が流星体として地球に飛び込んでくることになります。それが多数の流星を発生させるわけです。流星群の引き起こす彗星のことを、とくに母天体または母彗星といいます。
このようにして生じるおもな流星群は、20群が知られています。一般に流星群には星座の名前が付けられていますが、これは彗星の軌道を通過するとき、地球の進行方向に見える星座になります。地上から流星群を観測するとき、流星はその星座の1点(放射点)から放射状に飛び出してくるようにみえます。

おもな流星群 国立天文台編 理科年表 より転載
番号 流星群名 極大月日 出現頻度 母天体 備考
定常群 しぶんぎ座 1/3〜4
こ と 座 4/21〜23 1861J
お と め 座 4/7〜18
みずがめ座η 5/4〜5 Halley
みずがめ座δ 7/28〜29
や ぎ 座 α 8/1〜2
ペルセウス座 8/12〜13 Swift−Tuttle
はくちょう座 8/19〜20
オリオン座 10/21〜23 Halley
10 お う し 座 11/4〜7 Encke
11 ふ た ご 座 12/12〜14 Phaethon?
12 こ ぐ ま 座 12/22〜23 Tuttle
周期群 13 ジャコビニ 10/8〜9 変化する Giacobini−Zinner りゅう座γともよばれる
14 し し 座 11/17〜18 変化する Tempel−Tuttle
衰退群 15 うしかい座 6/28 Pons−Winnecke
16 アンドロメダ座 11/14 Biela
昼間群 17 く じ ら 座 ο 5/19 昼間に出現するため、
眼視観測はできません
18 おひつじ座 6/8
19 ペルセウス座ζ 6/13
20 お う し 座 β 6/30

以前は流星群ではなく、「流星雨」と呼ばれていました。いつのころからか分りませんが、「流星雨」とは呼ばれなくなりました。その理由も定かではありません。「流星雨」と聞くと、あたかも雨が降るように流星が見られると思いませんか?実際に流星群が発生したとき、肉眼で観測できる流星の数は多いときで1分あたり10個程度ですから、数秒に1個の割合で見えることになります。けれどもこの程度ではにわか雨にも及びませんね。実際と言葉のイメージがあまりに違いすぎたことが、「流星雨」と呼ばなくなった理由ではないでしょうか。
ところが古い記録を調べてみると、1799年11月12日に発生した「しし座流星群」は、南北アメリカ・西部ヨーロッパで観測され、その記録から1時間あたり70〜100万個の流星が出現したと推定されています。このような光景を見せられれば、まさしく「雨のようだ」と言ってよいでしょう。このような記録は数多く残されています。文字どおりの「流星雨」が今年発生するかもしれません。毎年その光景に遭遇することを夢見ながら夜空を眺めています


【流星群の眺め方】
流星群では、流星がそれぞれの星座の1点(放射点)から放射状に飛び出してくるように見えます。といっても、その星座の周囲にだけ見られるだけではありません。星座の名前は便宜上つけられていると考えてください。流星は、放射点を中心として、全天の半分に現れます。人の視野を越えた範囲に流星が現れることになります。ですから1点を凝視するような眺め方ではなく、放射点がある星座の方向をなんとなーく見ているような眺め方がよいでしょう。
実際にやってみると、けっこう首が疲れます。背もたれが大きくて角度が変えられるイスがあるとよいのですが、レジャーシートを広げて寝ころがって眺めるの一番かもしれません。

【流星群を撮影してみよう】
<機材の準備>
次の機材さえ揃えば、流星群を撮影するのは意外と簡単です。

機 材 名
注意事項
カメラ
一眼レフカメラなど、シャッター速度の設定に B (バルブ)または
T (タイム)があるものが必要です。
レンズ 広い範囲に流星が出現する可能性がありますから、F値(口径比)
の小さな画角の大きな広角レンズをお勧めします。
三脚
カメラの重さに見合った大きさ・重さが必要です。
小さすぎたり、軽すぎると倒れてしまいます。
レリーズ
シャッターを開放にしておくために必要です。


<フィルムの選択>
月明かりや街の明かりが届かないような好条件の夜空なら、高感度のフィルムを使いましょう。さほど明るくない流星まで写すことが可能になります。
ところが高感度フィルムを、月明かりや街の明かりの影響が出て明るい夜空で使用すると、夜空そのものが明るく写ってしまいます。このような場合には、感度の落して ISO400 ぐらいのフィルムを使うのが無難でしょう。
フィルムにはネガフィルムとポジフィルムがありますが、どちらでも構いません。色の鮮やかさならポジフィルム、写真にする手軽さならネガフィルムの方が有利でしょう。

<撮影準備>
これらの機材が揃ったら、レリーズを付けたカメラを三脚に取り付けレンズを放射点がある星座に向けます。この後は、次の点をチェックして下さい。
1.シャッター速度の設定
シャッターを開放にしておくため、B (バルブ)またはT (タイム)にする。
2.レンズの絞りの設定
開放( f 値を一番小さくする)か、1/2〜1段絞りこんだ状態にする。
3.レンズのピントの設定
星は非常に遠方にありますから、ピント目盛りを ∞ (無限大)に合わせる。

これで準備は完了しました。

<撮影手順>
流星はどこに現れるかまったく予想がつきません。フィルムに流星が写るかどうかは、「運」次第です。シャッターを開けて、辛抱強く流星が現れるのを待つだけです。
非常に感度の高いフィルム使用している場合や、月明かりや街の明かりのために夜空が明るいところで撮影する場合に、シャッターを開けておく時間が長いとフィルムにカブリ(写真にしたときに真っ白になってしまう状態)が生じます。フィルムを無駄にすることになるかもしれませんが、シャッターを開けておく時間(露光時間)を5分程度にとどめ、フィルムを巻き上げていくことを勧めます。ただしどの程度の露光時間が適切かは、前日までに試し撮りをして確かめた方が良いでしょう。

<参考図書>
天体写真に興味のある方には、以下のテキストをお勧めします。丁寧で初心者にも分りやすく解説されていますが、その内容は十分に高度です。

チロの天文シリーズ 藤井 旭 の 天体写真入門 ISBN4-416-28814-X

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