オーロラ −オーロラ観望の手引き−
オーロラを見てみたいという方の参考になればと、オーロラ観望のためのポイントを並べてみました。
1.どこへ行けばみられるか?
オーロラが頻繁にみられるところを、オーロラ・ゾーン(オーロラ帯)といいます。これはオーロラが見られた回数を統計的に求めた結果から得られたもので、磁極を中心とした半径約2500Kmの円から南北に幅数百Kmに広がるリング状の地域で、緯度にして50度以上の地域となります。オーロラ・ゾーンは、北半球にも南半球にもあります。このオーロラ・ゾーンに含まれている場所にいれば、オーロラを見ることができる可能性があるということになります。南半球ではオーロラ・ゾーンのほとんどが南極大陸になっていることもありますが、日本からオーロラ観望に向かうのであれば、大半が陸地となる北半球のオーロラ・ゾーンのどこかを選ぶことになります。オーロラが見られる確率は、オーロラ・ゾーンの中心ほど高くなります。北半球のオーロラ・ゾーンの中心に近い所としては、アメリカではアラスカ州のフェアバンクスやバロー、カナダではノースウエスト準州のイエローナイフ、フォートマクマレー、チャーチル、ユーコン準州のドーソン、アイスランドではレイキャビーク、アクレイリ、北欧ではバレンツ海に面したスカンジナビア半島の北部があげられます。実際には 行きやすさを考慮して、カナダやアラスカへ向かうのが無難でしょう。
オーロラを見るためにわざわざ出掛けるのは、東洋人だけのようです。ほとんどが日本人で、まれに韓国や台湾からいらっしゃった方に出会います。少なくとも、オーロラを見るためのアメリカ本土やカナダ南部からやって来る人はいないようです。カナダにイエローナイフで目にしたタウン誌でこのことが記事になっており、やはり現地の人には大変奇妙にとらえられているようです。日本人が多くやって来る理由として、小学校の授業でオーロラが取り上げられているからだとか、オーロラに関して多くの伝説があるからということになっていました。ちょっと違うような気がしますね。
2.どの季節に行けばいいのか?
オーロラは昼夜の別なく、年間を通じて起きる電磁気の相互作用による発光現象です。発光現象と言っても一般にその明るさは月に比べてかなり暗いので、空が十分に暗くないとオーロラは空の明るさに紛れてしまいますから、夜にしかオーロラを見られません。前に述べたように、オーロラ・ゾーンが北極や南極に近いために、夏は夜の時間が短い(フェアバンクスの6月では2時間ほどになる)のでオーロラ観望には不利と言えます。やはり夜の時間が長い(フェアバンクスの12月では18時間ほどになる)秋から春先(9月ごろから4月始めぐらい)が有利でしょう(→参考リンク〔Poker Flat Research Rengeより〕(現在リンクが切れています))。観光の1つとしてオーロラを組み込むのであれば、短い秋も楽しむことができる9月の上旬から中旬がいいかもしれません。夜が長くなる12月から2月あたりはオーロラ観望には望ましいシーズンとなりますが、寒さ(−40℃以下)を我慢することにが絶対条件となります。イエローナイフに住むイヌイットのおばあさんによれば、寒ければ寒いほどずばらしいオーロラが現れるそうですから。
極寒の時期にオーロラを見に行くためには、それなりの防寒着が必要となります。一式購入しようとすれば数万円の出費となるでしょう(防寒ブーツは必須です)。最近は防寒着のレンタルがありますから、これを利用する方が無難です。日本から行きやすいアラスカ・フェアバンクスとカナダ・イエローナイフでもレンタルできます。フェアバンクスでオーロラを見るためには、アンカレッジで貸し出しとなるためフェアバンクスまで手荷物として移動することになります。一方イエローナイフでは、現地のホテルでレンタルできるので、ほとんど北海道旅行の感覚で出掛けることができます。
3.何時ごろ見られるのか?
オーロラは、空さえ十分に暗くなる夜であれば、いつでも見られる可能性があります。統計的にも経験的にも真夜中に近い数時間に多く現れるようです。ただオーロラは常時現れているわけではなく、突然現れやがて消えていきます。オーロラが現れる前兆などはなく、油断は禁物です。常に夜空をながめていないと見逃してしまうことになります。とはいっても、極寒の中に居続けるの酷なことです。経験的には10分おきぐらいに夜空をチェックしていればよいでしょう。チェックする時には、オーロラがどのように現れるかを知っておいた方がよいでしょう。
4.どんなふうに見られるのか?
オーロラはいきなり明るく輝きだすわけではなく、決まった場所に現れるわけでもありません。一般的には次のステップで変化します。
(1)比較的低高度に淡い輝きが現れます。北東から南東または北西から南西を中心に注意しましょう。
(2)明るさを増しながら、長くなる。東に現れたオーロラは西の方向に向かって伸び、西に現れたオーロラは東の方向に向かって成長していきます。このときカーテンが風に揺らぐように動いていれば、それは間違いなくオーロラです。形の変化がほとんどないようであれば、雲なのかもしれません。
(3)さらに明るさを増し、複雑な形となる。近くに現れたオーロラは、南北を結ぶ線(子午線)を越えて成長し移動していきます。逆に遠くに現れたオーロラはあまり移動しません。このときの成長や移動の速さは、オーロラの規模によって異なり、激しく変化するものほど明るく素晴らしいオーロラとなるようです。
(4)徐々に明るさを失う。ピークを向かえたオーロラは、徐々に明るさを失っていき、淡くなってやがて消えていきます。
全天カメラでとらえた、オーロラの出現から消失までの過程が、Poker Flat Research Range から公開されています。アニメーションは、一晩の様子が30秒ほどのMPEGファイルになっています。激しいオーロラが現れた日のファイルは1Mバイトぐらいになっていますが、一度ごらん下さい(→Alaskan All-Sky Cameras (現在リンクが切れています))。
5.どんな形に見られるのか?
オーロラの基本形はカーテン状です(→参考画像)。一般には下の方が明るく、上の方が淡く見えます。形は絶えず変化しており、意外と早く形が変わっていきます。オーロラは地上から80Km以上、上空で輝いていますから、風などでたなびいているわけではありません。ここでは取り上げませんが、地球周囲の電磁気現象が影響しています。時には、渦を巻くようになります(→参考画像)。
またオーロラと観望者の位置関係によって、見られる形も異なります。北または南の方向に見られるオーロラはカーテンを正面斜め下方向から見たような形となります(→参考画像)。東や西の方向に見られるオーロラはカーテンを横方向から見上げたような形となります(→参考画像)。観望者の真上にオーロラがやってくると、オーロラが降りそそいでくるように見えます(→参考画像)。
6.どんな色で見られるのか?
オーロラの色の多くは緑色です(→参考画像)。といってもその色は非常に淡く、写真でみるように明らかな緑色が見られるわけではありません。感じ方は人によって異なるでしょうが、淡い黄緑色に見えたり、わずかに緑がかった白色に見えるのが一般的です。オーロラの色は、明るさが増すほどはっきりしてきます。さらに明るさを増してくると、オーロラの一部が赤く見えてくるでしょう(→参考画像)。ときには、黄色や青色がみられることもあります。
7.より良くオーロラをみるためのポイントは?
日程を自由に設定することができるのであれば、次のポイントを押さえるとよいでしょう。
(1)月齢を考慮する。満月の出ている空では、その明るさのために淡いオーロラが見づらくなってしまいます。三日月になる日を選ぶと良いでしょう。月の状態はアストロアーツの月齢カレンダーを参考させてもらいましょう。
(2)オーロラの規模(激しさ)は、太陽の活動と密接に関係しています。太陽の活動が激しい時ほど、オーロラも素晴らしいものになります。太陽の活動は強さは周期性があり、長期的には11年周期、短期的には26〜27日周期で変化します。
長期的には前期の活動のピークが1990年ごろでしたから、次回は2001年ごろにピークがくると思われます。といっても一昨年あたりから、十分な活動度となっていることから、今年(1999年)から2003年の春ぐらいまでは大きな期待が持てるでしょう。
短期的な周期は持続性がなく、続いたとしても2〜3ヵ月程度です(→情報通信研究機構 平磯太陽観測センターの太陽地球環境情報サービスの地磁気活動27日チャートが参考になります)。激しい太陽の活動あったとか、素晴らしいオーロラが見られたという情報を耳にしたら、その26〜27日後に再び素晴らしいオーロラが期待できるということになります。
(3)晴れの日を狙う。オーロラは雲よりも高い、地上から少なくとも80Km以上、上空で生じる現象ですから、晴れた日でなければ見ることはできません。ここ数年の状態を調べてみると、地球温暖化・エルニーニョの影響なのでしょうか、気温の上昇が見られ(特に海水温の上昇の影響は大きいようです)、それにともなって雲が発生しやすくなり、オーロラの観望地も曇りの日が多くなっているようです。日本から行きやすいアラスカ・フェアバンクスとカナダ・イエローナイフではどうでしょうか。CNNの天気予報( フェアバンクス 、 イエローナイフ )などをチェックしてみると(昨年(1998年)までデータを見る限り)、比較的海に近いフェアバンクスでは一度曇りだすと数日(5日から7日以上)回復しません。より内陸側のイエローナイフでは、曇りの日が3日程度しか続きません。日本からのツアーでは現地滞在3〜4日がほとんどであることを考慮すると、イエローナイフへ行った方がオーロラを見られる確率が高いようです(このところイエローナイフへ出掛けている理由はここにあります)。CNNの他に、比較的楽観的な予報で安心させてくれる Intellicast Weather では、最新の衛星画像も見られます。
天気ばかりは運次第ですので、たとえ曇りの日が続いたとしても、あきらめるしかありません。
オーロラが見られるか見られないかは、結局は運です。
日頃の心掛けを良くしておきましょう!!